2010年03月05日
夏と冬、藻琴山登山
<真冬の藻琴山の山容は神々しいまでの姿である>
標高がちょうど千メートル、展望台であるハイランド小清水の横にある登山口から頂上までの標高差280メートルの藻琴山は、登山道も分かりやすく初心者でも気軽に登れる山である。アイヌ名は「トエトクシペ」といい、湖の奥になる山という意味である。
登山口で登山届けに名前を記入して歩き出すと、いきなりハイマツとクマザサの急な登り。しかし、眺望はすぐ開け始め、左手に屈斜路湖のパノラマが見え隠れし始める。屈斜路湖は直径約24キロの巨大なカルデラ湖。湖の周囲を取り囲む外輪山の一番高い場所が藻琴山の頂上である。眺望が開けたところで振り返ると、斜里岳の神々しい山容とオホーツクの大地の広がりが見渡せる。
しばらく稜線を上り下りしながら歩くと、やがて頂上直下に見えてくるのが屏風岩。ささくれ立った岩で大きな岩盤越しに見える屈斜路湖は藻琴山の絶景のひとつ。さらに夏には屏風岩の周辺はお花畑になる。岩場に張り付くようにして咲くコケモモ、ケゾキリンソウのけなげな可憐さには目を奪われる。他にもチシマセンブリ、エゾオヤマノリンドウ、ハクサンイチゲなどの高山植物が見られる。
尾根沿いの急な登山道を登りつめると、やがて広い平坦地に着く。頂上はこの少し先の急坂を登った場所。しかし、石碑のある頂上はあまり広さがなく、五人も座れば一杯になるので、休憩や食事をするのは直下の平坦地を利用するほうがいいかもしれない。
頂上からの眺めは、まさに360度のパノラマ風景。眼下に広がる屈斜路湖、同じ外輪山の一部である美幌峠、斜里岳と麓の原野、オホーツクの大地の広がりの向こうに見えるオホーツク海。まだ、藻琴山に残雪の残る五月に登山をすれば、色の無い大地にピンクの線を引く芝桜公園が鮮やかだ。
手軽に登れる山にも関わらず、素晴らしい眺望が見られる藻琴山は冬も登山者が絶えない。山スキーやスノーシューを履いて、雪の斜面を登る人の姿が見られる。夏の登山では邪魔になるハイマツが雪の下に埋もれるので、むしろ登りやすくなるのだ。登り始めに見られる樹氷も美しい。頂上付近にある斜面は山スキーやバックカントリースノーボーダーにとっては絶好のパウダースノーを味わえる斜面で人気が高い。
さらに夏以上の眺望が見られるのも魅力。オホーツク海には二月になると流氷が押し寄せる。この時期、藻琴山に登ると大地の向こうに広がる流氷原が見渡せる。海と地面の境目が分からない風景を見ると、厳冬期には北海道とシベリアが地続きになることが分かる。きっと、幻の先住民族といわれるオホーツク人は冬に大陸から流氷の上を歩いて、この地に辿り着いたのだと安易に想像できるのだ。
藻琴山の冬の登山のベストシーズンは流氷の来る二月から三月。日照時間も長くなり、雪も程よくしまって歩きやすくなる。冬でもそれほど難易度は高い山ではないが、雪山に対する経験と装備は必要。春先は雪崩にも気をつけたい。初心者は登山ガイドが案内するツアーに参加するほうがいいだろう。(く)





