2011年09月26日

知床半島のヒグマとそこに暮らす人々のルール

知床を紹介する映像には必ず登場するヒグマ。映像用に特別な場所で撮影されたのだろうと思われる方が多い。

たしかにカメラの前で悠々と鮭を捕まえていたりするヒグマは、知床半島の奥の方に居るヒグマが多い。

しかし、ウトロの街の中にも、あるいは知床へ向かう道路を走る車も、学校帰りの子供も、ヒグマを見るし、ヒグマと出会う。知床半島は日本で一番、ヒグマの数が多い場所。

最近、ニュースによく登場するツキノワグマよりもずっと大きい。

知床では、彼らが人間の暮らす領域に姿を現したからと言ってすぐに駆除(殺す)はしない。ヒグマ対策員が調査し、その対応を検討し多くは追い払われる。

ヒグマの行動、あるいはそのヒグマと接触するであろう人間の行動から判断する方法で、知床ではヒグマ遭遇の事故はまだない。

しかし、そこには大切なルールが存在する。

学校では(小中学校が1校)全員が、ヒグマに出会わないためにどうするか。また、ヒグマに出会ってしまったらどうするのか。と言うことを毎年学校で学ぶ。

ウトロで生活する人たちは生ゴミの管理を厳しく行う。畑の肥料にするためのコンポストは設置しない。なぜなら匂いで彼らを誘引するから。

そして、野生動物との距離を保つ。それは、餌付けや餌やりをしないこと。これはヒグマに限ったことではなくエゾシカにもキタキツネにも同じ。

ウトロという地形から分かるように、周りは森に囲まれた地域では、どこでもヒグマの住処であり、野生動物の生息するエリア。それを、ここで暮らす人たちは理解しているし、そのために自分たちがルールを守らなければならないことも知っている。

「事故はまだない」けれど、野生動物と人の問題はたくさんあるし、これからもやらなくてはならないことはたくさんあるだろう。

安全を確保すること、そして野生動物を含めた自然との距離を守ることについては今の状態で満足ではないはず。

これだけ多くのヒグマが生息する知床で「事故はまだない」だけかもしれないし、いつ起こってもおかしくない状態かもしれない。

でも、一つだけ確実なこと。それは人間がルールを守ろうよ、ということだ。ここを訪れたみなさんも野生動物に餌はあげない、ことを守ってほしい。(さ)


2011年09月21日

東藻琴の2つのユニークなイベント

東藻琴には2つのこの村ならではのユニークなイベントがある。そのひとつが「ロール転がしどってん酷」だ。

8月下旬に行われる「ノンキーランドふるさとまつり」のメーンイベントといってもいいロール転がしは、500Kgの牧草ロールを男性は4人、女性は5人で転がしてタイムを競うという力の入るゲームである。

東藻琴には酪農家用として牧草畑を作っているところが多い。これをふるさとまつりに利用できないか、という話が農家の青年たちのなかから持ち上がったのがきっかけだ。

片道50mのコースには高さ1mほどの小山があり、これをクリアできるかが勝敗の分かれ目になる。競技の参加料は男性1万円、女性5千円だが、毎年参加チームは多い。

もちろん村外からのエントリーも多く、優勝はここ数年は村外チームにさらわれている。

ちなみに2005年度の優勝チームは男性が「怪力アニマルズ」(滝川市)、女性が「琥珀」(佐呂間町)である。

どうもメンバー構成にポイントがあるようで、力自慢の人をそろえることも必要だが、小山を登る時に下から支える力が重要なのだと関係者は語る。

だから、チーム内での身長の差が案外勝敗のカギを握っているかもしれない。

優勝賞金は男性が20万円、女性が10万円というから、ロールを転がす側も、見る側も力が入るイベントである。

ふるさとまつりではこの他に村長とのジャンケン大会、もちまき、歌謡ステージ、バーベキューなどもあり、1日のんびりと楽しむことができる。

<ロール転がしどってん酷>

ユニークなイベントの2つ目は毎年10月最終日曜日に行われる「もこと山ふきおろしマラソン」である。

当初は東藻琴村陸上協会が主催していたが現在は教育委員会が主催する。10月下旬といえば平野部でも初雪が降ってもおかしくない時期である。

そんな時期に、藻琴山725mのところのハイランド725からスタートして、一気に駆け下りてくる、というレースである。

そんな競技に毎年500人以上の人が参加している。そのうち、村民は10%、あとの90%は村外からの参加者である。なかには20年以上連続で走っているという人もいる。

秋が深まると藻琴山から吹きおろす風は肌をさすほど冷たい。

このマラソンの名の由来はそこにあるのだが、この時期、北海道で催されるマラソンはほとんどなく、このふきおろしマラソンが北海道内での締めくくり、という意味が強い。

その年によっては、雪やみぞれが降るなかでのレースになったりして、紅葉と雪という景色も走る人には魅力なのかもしれない、と大会関係者は語っている。

競技は21.0975Kmのハーフマラソンから3Kmまでの中距離と男性・女性、それに年齢差で全部で14のコース細かく設定されていて、それぞれの体調や力量に合わせて選ぶこともできる。(ひ)

<ふきおろしマラソン>

2011年09月12日

幻の鮭とよばれるケイジ(鮭児)は実は迷子?

2005年(平成17)秋の知床の鮭漁は史上最高の水揚げを記録した。ウトロの街も活気があふれ、連日水揚げされた鮭を運ぶトラックの往来が激しかった。

お盆の観光客が大勢やってくる道路は、9月に入って魚の運搬トラックが走る道路になった。大豊量でうれしい反面、鮭を積んだトラックから水が落ちる。その水はもちろん魚の匂いがする。 斜里町へ続く道路はこの季節、魚ロードになる。

それも、ここ知床の風物なのかもしれない。車が汚れることと、魚臭いことは我慢していただかなくてはならないが。(トラックの後ろを走るときは窓を開けてはいけない。まして、オープンカーなどは要注意である)

そんな鮭の中に、幻と呼ばれる最高級の鮭が居る。最近ではテレビでも取り上げられてすっかり有名なケイジと呼ばれている鮭である。

知床で水揚げされる鮭はシロザケと言われる種類で、ケイジもシロザケなのであるが、さて、どうしてこんなに味の違いが出るのだろう?突然変異?さて、どうしてだろう。

そもそも、知床で水揚げされる鮭は孵化事業によって放流された鮭がほとんどであり、彼らは知床の河川(自分が育った河川)に戻ってくるのである。4年間の回遊を経てふるさとの川へ戻る。この習性が現在の孵化事業を確実なものとして、さらに大量の水揚げにつながっている。だから、知床の鮭は正真正銘の知床産なのである。

しかし、どうやらケイジはちょっと違うのではないかというのが最近の説だという。

定置網漁の漁師に聞いたところ、ケイジは知床生まれではなく、なんとアムール川をふるさとにするシロザケではないかという。

本来ならば回遊コースが違っているはずなのに、たまたま迷ってこちらの鮭たちのコースに来てしまう、いわば迷子の鮭ではないだろうか、という説が有力らしい。

アムール川産のシロザケだから美味しいのか、あるいはこちらまで迷ってきてしまうから美味しいのか分からない。だとすると、知床産の鮭が他の地域や国で水揚げされるとやはり味は違うのだろうか?

いずれにしても大量に水揚げされていても非常に数も少なく貴重なケイジ。たくさんの迷子も知床の漁師が迷子センター設置で引き受けます!(さ)


2011年09月05日

9月に知床産のウニ丼?ちょっと待って!

知床半島を目指して走る快適なドライブ。青いオホーツクは豊かな海。

冬は一面、白い流氷に覆われ、その流氷が豊かな植物プランクトンを連れてくる。

そのプランクトンに集まる生き物たち。その食物のつながりが豊富な海の幸を提供してくれる。

ウトロは海産物の水揚げの多い港である。 当然、その水揚げされた海産物はおいしく、豊かな食を提供してくれる。

しかし、ここで知ってもらいたいことがある。たとえば・・知床で水揚げされた毛ガニを食べたいのならば8月までに来なければいけない。

水揚げされたばかりのアキアジ(シャケ)を食べたいのなら、3月に来てはいけない。

旬という言葉がある。

知床の海産物は、まさにこの旬に厳しい。

海がそこにあるからと言って、いつでも好きなときに好きなものを採ることはできない。「漁期」が決まっているのだ。

たとえば、ホタテは4月~9月。毛ガニは4月~8月。タコは6月~12月となっている。マス漁が7月~8月。その後はサケ漁が11月までと。

最近人気のウニ丼のウニは、4月~8月までが漁期。生ウニはホタテや毛ガニと違い冷凍保存はできないので、「知床産ウニ丼!」と9月や10月にメニューに書いてあったなら、ちょっと待って!と要注意。

どこか、ほかの産地から運ばれてきた可能性が高いはず。

知床でおいしく、新鮮な海の幸を楽しみたいのならば、ぜひ、この「漁期」を確認すること。

ただし、冷凍技術が進んだ現在、干物や、その加工品が最高に美味しいものもたくさんあるので、是非、その辺もリサーチしながらお腹をみたしていただきたい。(さ)